新・ちくま文学の森

森毅先生の名文

■森毅 「道化について」より抜粋 さて、ここにまかり出ましたるは、まぎれもない阿呆にてござりまする。阿呆相手に耳など貸さぬ、などとはおっしゃりますな。 世に賢者と言われる人の言葉なら、たいていは常識で間にあいます。そうでなくては、世に通用する…

海の描写について

■山本周五郎 「青べか物語」より抜粋 「砂なんて、おっかしなもんだなぁ」と富なあこが云った。 「うう」と倉なあこが云った。 五月十七日の晩で、二人は沖へ魚を「踏み」に来たのであった。汐が大きく退く満月の前後には、浦粕の海は磯から一理近い遠くまで…